楽しい旅行の計画が、終わらない支払いの始まりに?
海外旅行の航空券やホテルの予約、現地でのショッピングなど、クレジットカードは旅行の計画から終わりまで、私たちの強力な味方です。しかし、クレジットカードの明細や支払い方法の選択画面で「リボ払い」という言葉を目にしたことはありませんか?「毎月の支払いが楽になるなら…」と、特に高額になりがちな旅行費用をリボ払いで支払おうと考えている方もいるかもしれません。
しかし、その手軽さの裏には、クレジットカード初心者が陥りやすい大きなリスクが隠されています。この記事では、旅行という特別な出費を前に、リボ払いの仕組みと危険性を専門家の視点から分かりやすく解説します。仕組みを正しく理解し、賢いクレジットカードの使い方を身につけましょう。
そもそも「リボ払い」とは?分割払いとの決定的な違い
リボ払い(リボルビング払い)とは、クレジットカードの利用金額や件数にかかわらず、あらかじめ設定した一定の金額を毎月支払っていく方式のことです。例えば、毎月の支払額を1万円に設定すれば、その月に5万円使っても10万円使っても、支払うのは手数料を含めて1万円(※)となります。※支払い方式により計算は異なります。
分割払いとは何が違うの?
ここでよく混同されるのが「分割払い」です。この二つの違いを理解することが、リボ払いのリスクを把握する第一歩です。
- 分割払い:1回の買い物ごとに支払い回数を決めます。例えば、15万円の旅行ツアーを「3回払い」に設定すれば、5万円ずつを3ヶ月で支払い終えます。支払いが完了すれば、その買い物に関する支払いは終了です。
- リボ払い:利用したすべての買い物の合計残高に対して、毎月一定額を支払います。15万円の旅行ツアーの後に、2万円のお土産を買った場合、利用残高は17万円になります。毎月の支払額は一定のままですが、その分、支払い期間が自動的に延長されます。
つまり、分割払いは「買い物のゴール」が見えているのに対し、リボ払いは新たな利用が加わるとゴールがどんどん遠のいてしまう可能性があるのです。
なぜ危険?リボ払いに潜む3つの大きなリスク
「毎月の支払いが一定なら家計管理が楽そう」と感じるかもしれませんが、その裏には手数料(金利)の問題や、心理的な落とし穴が存在します。
リスク1:雪だるま式に増える「高い手数料」
リボ払いの最大のリスクは、非常に高い手数料(金利)にあります。一般的に、手数料率は年率15%前後と設定されており、これは消費者金融のカードローンとほぼ同じ水準です。この手数料は、毎月の利用残高全体に対してかかります。
例えば、手数料年率15%で30万円の海外旅行費用をリボ払いにし、毎月1万円ずつ返済するケースを考えてみましょう。支払いが完了する頃には、手数料だけで10万円近くも支払うことになり、総支払額は40万円近くに膨れ上がってしまうのです。楽しい旅行のために支払ったはずが、旅行代金の3分の1に相当する金額を手数料として失うことになります。
リスク2:感覚が麻痺する「支払い残高の不透明さ」
毎月の支払額が一定であるため、自分が今いくらクレジットカードを使っているのか、あとどれくらい支払いが残っているのかが非常に分かりにくくなります。「毎月1万円払っているから大丈夫」という感覚に陥り、つい使いすぎてしまうのです。特に旅行中は気分が高揚し、お土産や食事でついついお金を使いがちです。その利用分も自動的にリボ払いの残高に加算され、気づいた時には返済が困難なほどの金額に膨れ上がっていた、というケースは後を絶ちません。
リスク3:出口が見えない「支払いの長期化」
リボ払いでは、毎月の支払額以上に新たにクレジットカードを利用すると、利用残高は一向に減りません。それどころか、逆に増えていくことさえあります。これが、いわゆる「リボ払い地獄」と呼ばれる状態です。一度この状態に陥ると、支払っても支払っても元金がほとんど減らず、高額な手数料を払い続けることになります。せっかくの素晴らしい旅行の思い出が、終わらない支払いのプレッシャーによって苦い記憶に変わってしまうのは、あまりにも悲しいことです。
旅行で高額な支払い…その前に検討すべきこと
それでも、旅行費用のような一時的な大きな出費に対して、支払い方法を工夫したいと考えるのは自然なことです。しかし、安易にリボ払いを選ぶ前に、他の選択肢を検討しましょう。
手数料のかからない支払い方法を優先する
多くのクレジットカードには、「ボーナス一括払い」や「2回払い」といった、手数料がかからない支払い方法が用意されています。まずはこれらの方法で対応できないか検討するのが賢明です。
基本は「一括払い」。事前に旅行資金を準備する
最も健全で確実な方法は、旅行に行く前に計画的に資金を貯めておくことです。リボ払いで支払うはずだった高額な手数料を考えれば、その分を旅行中の食事やアクティビティに充てた方が、何倍も有意義な体験ができるはずです。
どうしても利用する場合は「繰り上げ返済」を
やむを得ずリボ払いを利用した場合は、資金に余裕ができたタイミングで「繰り上げ返済」を積極的に行いましょう。利用残高を早く減らすことで、将来支払うはずだった手数料を大幅に節約することができます。
まとめ:正しい知識で、最高の旅行体験を
リボ払いは、毎月の支払い負担を軽減してくれる便利な仕組みに見えますが、その本質は「手数料の高い借金」です。特に、クレジットカードを使い始めたばかりの方や、旅行で気持ちが大きくなりがちな時には、そのリスクを十分に理解しておく必要があります。
クレジットカードの支払いは「一括払い」を原則とし、リボ払いは利用しない、という強い意志を持つことが重要です。正しい知識を身につけてクレジットカードを賢く使いこなし、手数料の心配をすることなく、心から旅行を楽しんでください。
